日常

 午前3時に目が覚める。これはいつも通りの日常だ。換気扇の下まで場所を移動し、タバコに火をつけ青白く揺蕩う煙が、まだ意識の境界が朧気な瞳に映る。ここまでもいつも通りの日常だ。2本目を吸い始める頃には意識はもうすでここにある。ペットボトルのブラックコーヒーをマグカップに注ぎ、電子レンジで500ワット4分温めればいつものホットコーヒーが出来上がる。ただ過ぎるだけの変わらない日常。
 今の生活に不満はない。多くはないが友人だって居るし、恋人はいないが依存できるものもある。ただふとした瞬間に、漫然と過ごす日々の最中で、虚しくなる瞬間があるのだ。自分でも贅沢だと思う。これはしかし物質的な大小や、他人と比べた優劣によって巻き起こる感情ではない。
 刺激だ。人生における刺激に枯渇しているのだ。不満ではない乾いた日常を過ごす自分の中に、これまでの価値観が全て破壊されるほどの強烈な刺激を渇望してしまう情念がまだ残っている。それだけは確かだ。